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Histoire de mille nuits 02

02_新年のケーキ一切れ枕の下に入れる。

ウエディングケーキ、国によりスタイルは様々ですが、やはりイギリス的なものがよく知られています。少し前のこと、ホテルベーカーの厨房に「装飾室」があり、装飾技術に長けた職人が季節に応じてウエディングケーキやアメ細工などの飾りものを作っていました。ウエディングケーキは大きなフルーツケーキを焼いて、それらを順に重ねてからアンズジャムやフォンダンがけをして、さらにグラス・ロワイヤルで飾り絞りをするというものです。この作り方は厨房内で受け継がれる伝統的なものでした。「元日は聖バジルの祝日にあたる。銀貨のはいったケーキを焼き、切り分ける。銀貨をみつけた者は、幸運をさずかる。夕食後、家族で占いのゲームをする。ギリシャの少女は、新年のケーキを一切れ、枕の下に入れるが、これはイギリスの少女がウェディングケーキを一切れ枕の下に入れるのと同じ効用がある。」(海のヴィーナスの思い出、ロレンス・ダレル)その昔、ウエディングケーキは箱に大切に詰められ、イギリスから船で大西洋を渡り、新大陸に届けられたともいわれています。そのためには日持ちすることが必須で、レシピは日持ちする形を備えています。そのレシピはさまざまで、時代が変わっても現代まで伝わっています。以下配合は、そのようなレシピからのもので、写真のウエディングケーキの、フルーツケーキです。

バター360g、グラニュー糖240g、全卵320g、薄力粉400g、ベーキングパウダー8g、ラム20ml

バターとグラニュー糖をする立てて、全卵を少量づつ加えて、さらにかき立てます。薄力粉とベーキングパウダーを混ぜて、ラムと以下のフルーツ類を加えて、温度180℃のオーブンで、約1時間ほど焼きます。フルーツ類は、レーズン80g、サルタナレーズン80g、オレンジピール40g、レモンピール40g、ドレンドチェリー60g、ドライアプリコット40g、ラム40ml、バニラ適量です。この作り方は、レーズン以外の果実類を細かく刻んで、すべてを混ぜてラム酒で1ケ月以上、漬け込みます。そういえば、厨房の片隅にフルーツ類を漬けた樽状の箱があったように思います。ある時、その箱を開けると、漬け込まれた豊かな香りと味わい深い果実類が現れました。これがフルーツの漬け込みなのですね。時が味を創りだす、そんな時代の菓子でした。我が家の冷蔵庫には、いまも10年前に焼いた「パラダイスケーキ」が眠っています。さて、ウエディングケーキ。最上段は新郎新婦が持ち帰り、これを結婚1周年、2周年・・と記念日に少しずつ食べる、といわれてもいます。いいですね。結婚式で新郎新婦がケーキカットすると、ウエディングケーキはいったん引き下げられて、食卓に供されるため、あるいは祝いの品として切り分けられます。そんな祝いの菓子が、少女に贈られて枕の下にあるのでしょうか。

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