料理人の必須条件3 職業上の勉学2

7 - 料理人と仕事 / 第一章 若き料理人へ

料理人と仕事 / 第一章 若き料理人へ / 料理人の必須条件3 職業上の勉学2

料理人と語学

学力の科目として、いちばんさきに思いつくのは、語学の状態。いまや料理界は、英語であれ、フランス語であれ、日本語であれ、表現の方法その他が多岐にわたっている。西洋のものに、西洋の言語がともなうのは当然です。いままでは、西洋料理そのものの習得期とも言いえたから、「自分は読めない、書けない、わからない」でも、どうにか通ってこられた。

しかし、西洋料理が、ひとつの分野として、日本のなかに定まった現在、それでは済まない時代になった、ということです。語学までも、勉強の対象として、自分のなかに取り入れないことには、ひとりの料理人としての完成が、充分でないところに来ている。

料理人の語学は、なにも「外国の人と、外国のことばで話しなさい」というわけでない。外国で勉強する人は別として、日本にいるかぎりは「自分は料理用話しかわからない」と言えるところまでくれば、それでいいと思う。そこまでくるのにも、かなりの勉強が要るものだ。どこまでの語学力をもとめるか。

その最終目標は、メニューを判読できること、料理書を解読できること、メニューを書けること。この「メニューを書く」というのは、自分で料理をきめて、コースに組み立てて、これを文字で表現することです。料理人および、料理人の語学の、いわば卒業証明のようなものだ。

逆に言えば、ぼくが日本語で料理を説明したら、それをコースメニューの順にタイプで打って、声に出して読める、そんな若い人がいたら、この世界では特殊能力だと思いますよ。そして、もし料理人として優秀になったら、めぐまれた人です。ただ、料理人として大成しなければ、そのときは、能力の断片にすぎない。ふつうの会社なら、「外国語のひとつもしゃべって当たりまえ」「字がきれいで、計算もできて当たりまえ」「頭がよくても当たりまえ」でしょう。

でもここでは「あいつは、英語がしゃべれる」「あいつは、計算がはやい」「あいつは頭がいい」。つまり、料理人としての能力が、すべての基本であって、それになにかプラス点があれば、料理人としての総合能力に集約されるし、かならず、評価されるということ。

職業上の勉学は、努力によるものです。努力は、健全な心身によって、ささえられるが、天性とは、関係ないでしょう。知識と天性とは、異なる系列にあります。知識と天性、理論と感覚、経験と才能、どちらも、一本のものさしでは測れない。

料理人は、いかにも、天性と感覚と才能によって、創造的な仕事をするように思われている。しかし内実は、努力によって得る、知識と理論のありかたや、経験の蓄積量が、トレーニングにプラスされて、料理人としての「伸びる・伸びない」を、最終的には決定していきます。

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