Baguettes sandwich 02

02_サンドウイッチ侯爵登場

サンドウィッチについての評判は、いや不評ですかね。それは料理研究家の皆さんがよく言われてますが、その極め付きを紹介しておきましょう。

「サンドイッチには食事の楽しみが全くない。不健康な食物である。これは指を汚さずにものをつかむ方法にすぎず、まるでスーツケースを食べるようなものである。サンドイッチは、四代目のサンドイッチ伯爵ジョン・モンタギュが、徹夜のトランプゲームを中断されないようにハムを 2枚のパンではさんだのが起源とされるが、もしそうであれば、そもそもそのアイデア自身が食事を楽しむという考え方に逆行する。それにしても、英国人は昼にサンドイッチをよく食べる」(食べるポケットブック・ヨーロッパ編、クエンティン・クルー 著、長田光弘訳、鎌倉書房)

これを読んで貴方はどう考えられますか。私は考え込んでしまう。どうしてサンドウィッチが目の敵にされているのだろうか。私の所業の為か。いや、ひょっとして、サンドウィッチ自体が、不味い食べ物なのか。いやいや、これは、どうも食べ方に問題があるように思えてならない。サンドウィッチは手で持って、いや、摘んで食べる。人は長い年月をかけてフォークやナイフなどを使って、物を食べるようになった。それなのに、サンドウィッチはこの文明的な、美しい食べ方に逆行しているからなのだろうか。きっとそうだ。そうに違いない。食卓を離れて、歩きながらでも食べられる、野蛮な、悪魔のような食べ物というわけか。しかしながら、私はサンドウィッチは発明した。だが、歩きながら食べることは考えなかったな。たしかにピクニックに利用もした。しかし、ちゃんと、座って、しかも、ナプキンで綺麗に包んで、皿まで用いて、ナイフで食べやすいように切ってもいた。きっと、サンドウィッチに嫉妬をした人々が、流行するのを恐れて欠点を並べたてたのではないだろうか。

さてと、気を取り直して、ここで、サンドウィッチを愛好している女性を紹介しておこう。彼女の名前はキンジー・ミルフォーン。カリフォルニアで活躍している私立探偵で、彼女の食べるサンドウィッチは、なんて言ったら良いのか、とてもロマンチックだ。

「ひとり暮らしの利点のひとつはいつでも自分の好きなときにものが食べられることだ。今夜の夕食に、全粒粉のパンにオリーブ、ピメントチーズをはさんだサンドウィッチをつくった。わたしが買うこのブランドのオリーブ、ピメントチーズの味が、三歳半ではじめて食べたと記憶しているとき以来、すこしも変わっていないのは、なんといっても嬉しい。サンドウィッチをいつもそうするように、短く縦に四つに切り、白ワインをグラスに注いで、皿をソファのところまで持っていき、そこに寝そべって、ヘンリーがクリスマスのプレゼントにくれた本をひらいた。」(証拠のA、スー・グラフトン著、嵯峨静江訳、早川書房)

これはピメント・チーズ・サンドウィッチ(Pimento-Cheese Sandwich)というもので、薄く切ったパンにピメントチーズをぬり広げて、レモン果汁などをさっとふりかけて、ホースラディッシュをのせて、もう一枚のパンを重ねるもの。作り方は簡単。ピメントチーズ 80g (クリームチーズに缶詰のピメントを細かく刻んで混ぜるのでもよい )に皮むきアーモンドの細かく刻んだものを 30g、それにグリーンオリーブの細かく刻んだもの 30gを良く混ぜてから、生クリームを適量加えて、なめらかにする。これをパンにぬり広げる。どうです。美味しそうでしょう。これに、白ワインだったら、なるほどって思えますね。パンも軽くトーストしたものを使うと、もっと味わいが深く感じられそうでしょう。二枚のパンのあいだに絶妙なコンビネーションが隠されているってわけ。料理は創造力。これが「スーツケースを食べる」ことだと思いますか。どんなに豪華な料理を並べても楽しい食事といえないこともあるし、パンとチーズだけでも幸せな食事となることもあるのです。

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サンドウイッチ
5点

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