01_幸せな恋ならスフレは焦げる。

スフレなどの温製デザートは注文を受けてから、その時間を見計らい作ります。デザートになると、給仕人がいつもより急ぎ足になるようです。きっと、焼きあがったスフレが、その形を保つよう、沈まないように、と思うからでしょう。

スフレは温製デザートの代表的なもののひとつで、スフレ・ア・ラ・クレーム(卵と牛乳、砂糖などのクリーム系)とスフレ・オ・フリュイ(果実のピュレなどをつかうもの)にわけることができます。

いずれも卵白の泡立てが重要な役割を果たします。それに焼き方にも工夫が必要なので手がかかるデザートになります。お客さんの食事の進み方を考えながら準備しなければなりません。

私個人として、もっとも美味しいと思ったのは、厨房のオーブン前で、スプーンを片手に待っていたときで、この時はレモン香スフレで、アングレーズソースを添えてもらいました。

そこで、スフレをしっかりと味わいたいならば、オーブン前に食卓を設けて、焼きたてを待つのがベストかもしれません。そうすれば焼きあがりの形と風味を充分に堪能できます。

オードリー・ヘップバーンとハンフリーボガートが共演の映画「麗しのサブリナ」。失恋した18歳のサブリナはパリで料理修業、何をしても失敗ばかり。ある場面でスフレが登場します。髭の先生が「まもなく、スフレのでき具合がわかります。スフレは華麗であるべきです。あたかも一対の蝶が・・、夏の日にワルツを踊っているように・・・」

それでは、あと5秒、4秒、3秒、2秒、1秒。そして生徒がいっせいに自分のオーブンに向かいます。自分の焼いたスフレを取り出して、先生が見て回り、ひとこと。「低すぎる」「色が薄い」「重すぎる」「まあまあ」「傑作です、さすが男爵です」そしてサブリナはというと、「なっとらん」。

「なぜ、こんな・・・」と落胆しているサブリナに、フォンテネル男爵は、「料理に身が入ってなかった。恋をしとる。ずばり言えば、恋に破れている」

「わかるの?」

「よくわかる。幸せな恋ならばスフレが焦げる。恋に破れていると、スイッチを忘れる」

うれしい時も、悲しい時も、ストーブ前(オーブン)に立ったならば充分に気をつけてください。焦げたものも、生焼けも食べられたものではありません。

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