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収穫月のタルト

B5版変形
総200ページ(カラー商品177点)  
渡辺 義雄 製作/監修
榊 満 著
発行 : 有)モーリス・カンパニー

プロが作るおすすめタルト177レシピ

豊かな大地にはぐくまれた果実や野菜、乳製品、畜産品、そして海産物など、季節ごとに収穫される素材を集めて、タルトというかたちにまとめたのが本書です。タルト(Tarte)とは上質の生地に果実、その他の混ぜ物を詰めて焼くものです。これは味の点からみるとタルト・シュクレ(Tarte sucree)とタルト・サレ(Tarte salee)とに分けることができます。タルト・シュクレは「砂糖で味つけしたタルト」でデザートやティータイムの菓子として供される品々です。タルト・サレは「塩で味つけしたタルト」で、かるい食事やオードヴル(Hors-d'oeuvre)などで供される、軽い料理です。これらの甘味と塩味という、まったく性質の異なるタルトも、形の上からみると、同一の組み立てであるのがわかります。

私達は、この類似した組み立てに注目し、タルトといえば甘味のあるものととらえられていたものに、料理の分野から塩味のタルトをひき入れ、同一の位置に並べてみました。つまり、タルトをタルト型にしき込んだ生地に各種の素材を詰めて、この素材に適した味つけ一甘味と塩味一をしたものの総称と考えたのです。同一の位置に並べたとはいえ、タルト・シュクレとタルト・サレでは用途が異なり、すべてのメニューを混合することは出来ません。そこで構成上では、これらを二章に分けました。

本書の第一章はすべてのタルトを組立てる重要な素材である生地類にあてています。第二章は、これらの生地をもとに、"砂糖で味つけしたタルト"、タルト・シュクレとなり、ここではおもに果実やクリームを詰めたものの配合例を集め、これらを素材別に分けて載せ、さらに果実はそれぞれ通した利用法でいくつかの配合例を示しています。

Tarte sucree / タルト・シュクレ

abricot:アンズのタルト、ananas:パイナップルのタルト、banane:バナナのタルト、cerise:チェリーのタルト、custard:クリームのタルト、fraise:イチゴのタルト、figue:イチジクのタルト、framboiseetc.:ベリー類のタルト、fromage:チーズのタルト、mangue:マンゴォのタルト、marron:クリのタルト、orange:オレンジのタルト、peche:モモのタルト、prune:プラムのタルト、poire:西洋ナシのタルト、pomme:リンゴのタルト、potiron:カボチャのタルト、raisin:ブドウのタルト、rhubarbe:ルバーブのタルト、amandes、noix:ナッツ類のタルト、specialites:シェフ特製タルト

Tarte salee / タルト・サレ

quiche:キシュ、fromage:チーズのタルト、asperge:アスパラガスのタルト、champignon:シャンピニョンのタルト、epinard:ほうれん草のタルト、oignon:タマネギのタルト、olive:オリーブのタルト、pommedeterre:ジャガイモのタルト、escargot:エスカルゴのタルト、crevette:小エビのタルト、chickenpie:チキン・パイ、veau:仔牛肉のタルト、porc:豚肉のタルト、pizza:ピッツァ

キシュやピッツァもタルトの一種と思いでしょう。確かにこれらをタルトと呼ぶには、少し形がかけ離れているようですが、タルトを広い視野からみるための一例、タルトの一変形としてとらえ、載せてみました。 タルトの一変形といえば、タルト・シュクレ、タルト・サレ相方にトゥルト(Tourte)と呼ばれるものが出てきます。これは簡単にいえば、「上生地をかぶせたタルト」といえ、英国のパイ(Pie)にあたるものです。章としては、とりあげていませんが、これらのタルトに使われるクリーム類もタルトには欠かせない要素です。それぞれの配合例でみるしかできませんが、タルト・シュクレのフラン、クラフティ、カスタードといったクリームとタルト・サレのキシュ、タルトのクリームに類似点があるのではないかと感じています。一方は砂糖とバニラ、他方は塩と胡椒という、味の面では違いはあるのですが、どちらも生クリーム、牛乳と全卵を主体とするクリームだということは興味深 いと思います。

さて、これらのタルトは調理場ではどの分野の人が作るのでしょうか。タルト・シュクレは当然、パティシエ(Patissier)、捏粉製の菓子製造人の仕事です。そして、タルト・サレですが、これも、パティシエの仕事です。元来、キシュなどの分野もパティシエの仕事であったのです。ところが、「甘味で味つけしたもの」だけがパティシエの仕事だという考えが一般的となり、いつの間にかこれらタルト・サレなどの分野の仕事が忘れられたようです。野菜や肉類、魚肉などの素材は、菓子を専門とする人々には、異質のものでしょうが、これらの素材も調理法を十分に理解すれば取り入れることのできる範囲のものです。できることならパティシエの仕事は「甘味のみ」という考えに固執せずに、日常使っている生地、素材を利用して、少しでもレパートリーの幅を広げるため、これらのタルト類を試作され、メニューに加えられることを望みます。

「収穫月」という題は、フランソワ・ガッティ著 「アントルメ選集」のブシェ・フリュクティドール (Bouchees Fructidor)季節の果実を盛ったブシェからヒントを得たものです。フリュクティドールとは旧暦の実月で8月中旬からの一ヶ月をさします。

「パイとは、私にとって、かならず上にパイ皮をのせて焼いた食物である。とくに果物がいっぱいつまっているなら、上下ともに皮 があってもいい。しかし、底にパイ皮しか敷かないとすれば、それはタートだ。そうすると、話が簡単になる。私たちのパイの生れ故郷であるイギリスでは、詰め物によってタートだったり、パイになったりする。つまり、果物なら上皮がなくても、また底の皮がなくてもいいが、肉であればかならず上に皮がのっていて、パイと呼ばれ、タートとはいわない(肉と野菜を入れたパスティはいわゆる折りたたみ式のパイである)。フランスでは、タルトとはタートのことで、上の皮がなく、あけすけな感じがする。ただ、細く切ったパイ皮を品よく飾り、砂糖でつけた照りでかすかな羞じらいを見せてはいるが。」(アップルパイ、M・F・K・フィツシャー、集英社)